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歴史研究を進めるていくと、自分の決めたテーマに基づいて史料を探す必要が出てきます。また、初めは明確なテーマを持っていなくても、歴史に関する名著や概説書などを精読しつつ、多くの史料に接しているうちに、テーマを発見するという場合もあります。ここでは、そういった場合に知っておくと便利な、史料(文書や記録など)の調べ方について説明します。
テーマのはっきりしている人は、そのテーマについて、今日までどのような学説が主張されてきたかを知る必要があります。また、テーマをみつけ出そうとしている人は、次に紹介するような概説書やハンドブックを利用するとよいでしょう。
近年の、日本史研究の整理がなされている。
日本中世史に関する研究の現状、史料・史籍一覧、基礎用語などが収められている。
近世文書の調査・利用方法について知ることができる。
史料としての新聞、雑誌の利用の仕方や史料館案内などが収録されている。
日本史に関する論文が、時代別に収録されている。別巻2には、原始、古代、中世、近世、近代の史料論が収められていて、各時代ごとに史料の性格やあり方自体に特色をもっているのを知ることができる。
研究テーマがきまると、史料を収集して、史料批判、史料解釈、関連把握などの作業をする必要があります。あるテーマについての史料集を順次読破するということは、容易なことではありません。論文や著書に引用されている史料の原史料にあたって再吟味するうちに、いつか自分のテーマを発見することがあるでしょう。
史料集には、史料の収載方法が、編年体のもの、所蔵機関別のもの、主題別のものなどがありますから、いくつものアプローチが可能です。地域を限定して調べる場合には、府県市町村史の史料編をみると便利です。史料集をひもとく時には、編者の序文または解説を精読して、その史料集がどのような方針で編集されたものか、または、史料群がどのようなあり方をしめしているかについて、知っておく必要があります。
ここでは、史籍、史料集のなかから、いくつか紹介してみましょう。
(1)日本古代史に関する基本書奈良時代の文書・文献を、政治編(戸籍・計帳・正税帳)、宗教編(資財帳・献物帳)、経済編(諸国田券・奴婢帳)、文学編(風土記)に分類して収録。
平安時代の古文書・金石文・典籍の題跋を編年形式で集成。
文治元年(1185)から元弘3年(1333)までの鎌倉時代の古文書を編年形式で収集・編纂。
応仁の乱前後の記録。宝徳2年(1450)から永正2年(1505)までの興福寺大乗院門跡尋尊の日記で、山城の国一揆の史料としても有名。
各時代の代表的な日記その他の記録を収めたもの
第1・2巻 : 古代編
第3・4・5巻 : 中世編
第6-21巻 : 近世部落編
全国的分野の史料を幅広く収録している。
これまでの部落史は、主に支配者側の資料をもとに叙述されていますが、近年、被差別部落内部に残された史料にもとづく解放運動史の研究が課題とされています。今までに公刊されたものとしては、奥田家文書研究会編「奥田家文書」〔216.37*O3〕などがあります。
幕末維新に活躍した人物に関する史料集。
中世文書が、武家、公家、寺社文書を中心とするのに対して(庶民関係の史料は少ない)、近世文書の場合は、庄屋文書などの地方じかた文書が質量ともに重要な位置を占めています。
また、近世文書は多様で量も多いために、府県市史の史料編に未収録の史料が多くあります。史料集に収められていない史料のなかに、閲覧者にとって貴重なものがあるかもしれませんので、原史料群に接してみましょう。
本学図書館には、大阪周辺の庄屋文書を中心とする近世文書が所蔵されています。この史料を閲覧する時は、冊子目録によって検索してください。
近世文書は、図書と違って、家わけ(旧蔵者単位)で整理・保存されています。史料の分類は、主題分類法と年代順配列法とを併用したものです。目録には一点の文書について、整理番号、表題、作成年代、差出人、宛名、数量の順で記載されています。この目録を利用する時のポイントは、関連すると思われるいくつかの項目にも目を通すことです。
また、テーマにかかわらず、庄屋の留書(領主からの触・達や領主への願書の控・写をファイルしたもの)や書状、日記などを活用するとよいでしょう。
摂州嶋上郡高浜村西田家文書に含まれている江戸在住の旗本鈴木氏と、高浜村庄屋西田氏との往復書簡集。
古文書学、ならびに文書館学についての文献には、次のものがあります。
章節を追うにしたがって、しだいに専門的な機能論に立ち入るよう配慮されている。
地方文書の種類とその正確なよみかたを知ることができる。なお、幕府・藩関係文書は「日本古文書学講座」第6巻近世編・及び「演習古文書選」近世編・続近世編などが参考になる。
欧米の文書館学の理論と実践について紹介されている。
古文書の所在(所蔵機関)を調べるには、国立史料館など全国の史料保存利用機関の目録などを参照してください。なお、総合的に調べるには、次のものがあります。
府県別に編集されているので、研究調査の地域がきまっていて、史料の所蔵機関を知りたい時に便利。
巻末に府県別の「地方史主要文献一覧(1945-1989)」がある。